【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その五、サンボウ】

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シナリオ骨法十箇条とは、『仁義なき戦い』などの脚本家である笠原和夫さんの『映画はやくざなり』という本に書かれた脚本術です。

脚本家になるなら常識として知っておくことをオススメします。

本記事の内容

・サンボウについて
・欲求の5段階説
・物語における動機の種類

骨法その五「サンボウ」

「正念場」ともいう。ドラマを人体に見立てた場合、その目をまさに画きこむところである。進退ギリギリの瀬戸際に立った主人公がその性根をみせて、運命(宿命)に立ち向かう決意を示す点であり、これがないと、そこから先のドラマは視界ゼロの飛行になって、どこに着くやら観客には見当がつかなくなってしまう。

映画はやくざなり

明智光秀が織田信長の暗殺を決意して、自分の前の三方(サンボウ)をひっくり返したというのが由来です。

「サンボウ」は、主人公の決意→行動を見せ、物語がどこに向かうかを分からせるためのものです。

SAVE THE CATの法則でいうところの「第一ターニングポイント」ですね。

物語において、主人公は迷った末に行動します。

行動するには必ず動機が必要です。

この動機に観客が納得できなければ、物語は崩壊してしまいます。

ですので、とにかく行動させればいいというものではありません。

納得できる動機を描いた上で、行動させなければなりません。

迷い→動機→行動という自然な流れを描く必要があります。

欲求の5段階説とは

欲求の5段階説とは、心理学者のマズローが提唱した「人間の動機づけに関する理論」という論文で発表した説です。

人間だれしもが持っている欲求を、5つに階層化して解説したものです。

これを知っていると、キャラクターに説得力が生まれ、物語の創作において「生きている人間」を描くためのヒントになります。

欲求の5段階説は覚えなくてもいいですが、知っておくとちょっと便利です。

欲求の5段階説は人間の欲求について、ピラミッド型の階層で示しています。

この階層はピラミッドの下にあるものほど根源的で優先されることを意味しています。

ではまず、下の階層から順に説明していきます。

①生理欲求

生理欲求は、人間の生存に関する「本能的な欲求」です。

人間にとって、まずはこの生理欲求を満たすことが最優先されます。

食欲や睡眠欲などが当てはまります。

簡単に言うと「死にたくない」という欲求ですね。

食事や睡眠ができなければ、人間はそのうち死んでしまいます。

まずはこの欲求が満たされないことには、さらなる欲求は生まれてきません。

「死にたくない」という本能的な欲求は、人間だれしもが理解できる動機になります。

②安全欲求

生きるために安全な「場」を求める欲求です。

身体的な安全性良い健康状態最低限の生活水準の維持などを獲得しようとする欲求です。

生理欲求安全欲求の2つが人間の基本的な欲求と言うことができます。

③社会欲求

社会欲求は周囲の人々から受け入れられたいという欲求です。

生理欲求と安全欲求が満たされて、はじめて現れる欲求です。

これが満たされない状態が続いてしまうと、人間は不安になったり、孤独感を感じたりするようになります。

④尊敬欲求

尊敬欲求は自尊心の欲求です。

所属する集団から価値のある人間だと認めらたいという欲求です。

「出世」「愛する人に愛されたい」というような欲求です。

⑤自己実現欲求

①②③④の欲求がすべて満たされると、自己実現に至る欲求が現れます。

「自分の可能性を実現したい」「自身のもつ才能や技能を最大限に発揮したい」という欲求です。

人間の最上級の欲求ですね。

先にあげた明智光秀の例がこれにあたるかと思います。

物語における動機の種類

以下に欲求の5段階説を元に物語における動機の例をあげてみます。


①生理欲求
・死にたくない
・何か食べたい
・眠りたい

②安全欲求
・住む場所が欲しい
・早く家に帰りたい
・生活のためお金が欲しい

③社会欲求
・ひとりでいたくない
・コミュニティに属したい
・仕事を持ちたい

④尊敬欲求
・出世したい
・好きな人と結ばれたい
・尊敬する人から認められたい

⑤自己実現欲求
・自分の才能を見せつけたい
・自分の可能性を試したい


簡単な一例としてあげてみたので、実際はもっと細かく様々な欲求があるかと思います。

みなさんの書こうとしている話の主人公にはどんな欲求があるか、それは①~⑤のどの欲求にあてはまるか、まずは考えてみてください。

キャラクターが行動するには必ず動機が必要です。

なぜなら人間は、欲求を満たすためにしか行動しないからです。

これは物語を書く上での大前提で、忘れてはならないことです。

「人間を描く」ことの第一歩は、「誰にでも分かる動機を描く」というところにあります。

まずはこの基本を知った上で物語を作ってみましょう。

そうすれば、きっとストーリーにもリアリティが出てきて、生きたキャラクターを描くことができると思います。

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