【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その七、オリン】

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人の感情を動かす泣ける物語を作りたいです!でも実際に自分でそれを書こうとすると、ただのお涙頂戴になったり、説教くさくなったりしてしまいます。泣けるシーンを上手に書くには、どうしたらいいか具体的な方法を教えてください。

ヒセオ
ヒセオ

今回はこういった疑問に答えるべく、「シナリオ骨法十箇条その七、オリン」について解説していきます。物語は人の感情を動かしてナンボのものです。「泣かせる」というのは、高等技術が必要ですが、いくつか体系化されたパターンがあります。「オリン」の概念は、感動するストーリーを作るための素晴らしいヒントになると思います。


「もっと感動できる話を書きたい」というのは、初心者を脱した人が持つ悩みかと思います。

実際に僕もそうでしたが、最初のうちは書いてるだけで楽しい時期があります。

ただその楽しい時期が終わると何か自分の作品に物足りなさを感じてきました。

そこで、物語創作においてもう一段上のレベルの「もっと感動できる話を書きたい」という思いが出てきたのです。

そこで今回は、感動できるストーリーを作るために必要不可欠な概念、「シナリオ骨法その七、オリン」について解説していこうと思います。

オリンとは何か?どうものなのか?を知れば、感動できる話を書くための理解が深まります。

本記事の内容
  • オリンってなに?

  • オリンを作る際の4つの注意点

  • オリンを作る上で一番大切なこと


シナリオ骨法その一〜その六までは、すでに解説済みですので、まだ読んでない方や復習したい方は下記リンクからどうぞ。

今回解説する「骨法その七、オリン」「骨法その六、ヤブレ」と繋がっています。

なので本記事を読む前に「ヤブレ」を先に読んでおいてください。

「ヤブレ」について理解できましたら、さっそく今回は「骨法その七、オリン」について見ていきましょう。

本記事では、笠原和夫著『映画はやくざなり』に書かれた「シナリオ骨法十箇条」を元に、僕なりに解説しています。気になった方は本書を読んでみてもいいかもしれません。お金が無い方は、無理に買わなくてもこのブログ読んでおけばOKですよ。

オリンってなに?

「オリン」は涙を誘うエモーショナルなシーン観客を泣かせにかかるシーンのことです。

シナリオ骨法十箇条が記してある『映画はやくざなり』にはオリンについてこう書かれています。

ヴァイオリンのことである。


むかし「母もの映画」というヒット路線の映画が多産されていた頃、母と子の別れの場面にはヴァイオリンを搔き鳴らして観客の涙を誘ったものだった。


それで、感動的な場面のことを「オリンをコスる」と呼ぶようになった。


「オリン」の設定は、「ヤブレ」のあと、次の「ヤマ」の一歩前あたりが適当であろうか。

映画はやくざなり/笠原和夫


なぜ人は物語を読みたいと思うのか?

おそらく答えは「感動したいから」です。

人間は感情を動かされたい生き物なのです。

観客の感情を動かすためにオリンが必要になります。

シナリオ骨法のオリンは、ハリウッドの脚本術『SAVE THE CATの法則』で言うところの、「心の暗闇」のパートに似ています。

『SAVE THE CATの法則』では、「心の暗闇」について下記のように書いてあります。

名前の通りここは夜明け前の闇のようなもので、主人公は深く考え、心の奥底を探る


実は自分や仲間を救うための最善策を思いつくのはもうすぐなのだが、この時点ではそんなアイデアは生まれる気配すらない


すべては闇なのである。

SAVE THE CATの法則/ブレイク・スナイダー


「オリン」と違って、「心の暗闇」では、観客を泣かしにかかれとは直接的には書かれてませんし、泣けるシーンが絶対にないとダメというわけでもありません。

もちろん、泣けるシーンがなくても面白い映画はたくさんあります。

でも感情が動かされない映画はつまらないです。

笑えすぎて感動、新しすぎて感動、美しすぎて感動、作り手の想いに感動、いろんな感動があります。

「感動させる」ということのうちのひとつが「泣かせる」ということです。

さまざまな感動のうち「泣かせる」というのはもっとも分かりやすく、意図して書ける部分のひとつです。

「心の暗闇」は弱い部分を見せた主人公に観客を感情移入させるパートです。

そういう意味では「オリン」と同じだと言えます。

感動させる物語を書きたいのであれば、まずは「泣かせる場面」を書くことが、その第一歩になります。

オリンを作る際の4つの注意点

オリンを作る際の注意点は4つです。

  • ① 「魅力的な主人公」を作る

  • ②「解決不可能と思えるカセ」を作る

  • ③ 「倒すことが不可能に思えるカタキ」を作る

  • ④「キャラ同士の繋がり」を描く

上記の4つとも、物語の「前提の設定」です。

この土台がないことには、人は感動しません。

人を感動させるシーンを書くには、まずその物語の設定自体がとても大切です。

では、順番に見ていきましょう。

①  「魅力的な主人公」を作る

「魅力的な主人公」とはどんな主人公か。

  • ①共感できる

  • ②応援したくなる

  • ③二面性がある


とりあえず簡単に言うと上記の3つがあげられます。

①「共感できる」②「応援したくなる」は分かりやすいかと思います。

具体例としては、ジブリのヒロインが分かりやすい典型かもしれません。

純粋に頑張るけなげな女の子キャラには、共感し、応援しやすいですよね。


じゃあ、悪人を主人公にしたらいけないのか、善人しか書けないのか、というとそういうことではないです。

映画『パルプ・フィクション』のヴィンセントとジュールスは、マフィアなので世間的に見たら完全な悪人ですが、とても魅力的なキャラクターです。

冒頭2人は、ヨーロッパのハンバーガーがどうした、足のマッサージはエロい行為なのかどうなのか、など馬鹿らしいけど楽しい会話をしています。

観てない人はぜひ!


これが③「二面性ある」ということです。

ルパン三世も、ルフィも、キャラの構造としては同じです。

観客からどうでもいいと思われてしまうのが一番ダメです。どうでもいいと思われている主人公にどんな大きな事件が振りかかったとしても、観客の感情は動きません。

まずは魅力的な主人公を作りましょう。

いいやつなのか悪いやつなのか、立場や見方によって変わるキャラは魅力的です。

② 「解決不可能と思えるカセ」を作る

「解決が不可能と思えるカセ」の存在が、泣かせる話を作る条件です。

ちょっと頑張れば何とかなりそうなカセを、主人公がちょっと頑張ったら解決できちゃった、なんて話には誰も感動しませんよね。


カセとは、主人公の行動を制限しているものです。

一応、物語のカセの種類を載せておきます。

①時間(爆発まで30分、余命1ヶ月)

②秘密(過去の罪、出自)

③隔絶(監獄、雪山)

④約束(遺言、自分の信念)

⑤身体(病気、障がい)

⑥立場(教師と生徒、里親と養子)

⑦禁忌(不倫、殺人)

⑧災害(地震、台風)


詳しくは【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その二、カセ】を読んでみてください。

カセが強ければ強いほど、強い物語が作れます。

カセが大きければ大きいほど、それを主人公が乗り越えたとき感動が大きくなります。

③ 「倒すことが不可能に思えるカタキ」を作る

カタキとは主人公の前に立ちふさがる壁です。

これも上記のカセと考え方は同じです。楽に勝てる相手に勝ったって誰も感動しません。

だから強大なカタキを作り、「果たして勝てるのか?」と観客に思わせる必要があります。

詳しくは【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その四、カタキ】を読んでみてください。

カタキが強ければ強いほど、強い物語が作れます。

カタキの存在が大きければ大きいほど、それを主人公が倒したとき感動が大きくなります。

④「キャラ同士の繋がり」を描く

初心者がよくやる「主人公がひとりで考えてひとりで答えを出す」と言う話は感動しづらいです。

そもそも人間は一人では生きられません。物語の主人公もそれは同じなのです。

人は、人に感動します。人と人の心の繋がりに感動するのです。

映画『グッド・ウィル・ハンティング』のラストで、ショーン(ロビン・ウィリアムズ)がウィル(マット・デイモン)に「君は悪くないんだ」と言う泣けるシーンがあります。

ウィルがショーンに心を開き、涙を流す場面でのセリフです。

ショーンはウィルと同じように虐待を受けた過去を持っていました。

そして優しく「君は悪くないんだ」と何度も言うのです。


まさに2人の心が繋がった瞬間です。

もうひとつ『グッド・ウィル・ハンティング』の最高のシーンがあります。

ウィルは親友のチャッキー(ベン・アフレック)に、20年後も今みたいに工事現場で働いてお前と馬鹿をしてもいいと言います。

それに対してチャッキーは「もしお前が20年後も工事現場でなんか働いてやがったら、俺がぶっ殺してやる」と言うのです。

そのあとに続くセリフがまた最高なのですが、長くなるのでここでは割愛します。(グッド・ウィル・ハンティング観てない人は観てください!)

チャッキーは、ウィルがものすごい才能の持ち主だと気づいていました。友を本当に思うからこそこのセリフが出たのだと思います。

『グッド・ウィル・ハンティング』では、
① 「魅力的な主人公」が存在し、
②「解決不可能と思えるカセ」があり、
③ 「倒すことが不可能に思えるカタキ」がいて、
④「キャラ同士の繋がり」をしっかり描いています。

だから泣けます。

オリンを作る上で一番大切なこと

ここまで理詰めでゴタゴタと書いてきましたが、結局のところ大切なのは「作り手の熱意」だと思います。

え、急にそんな目に見えない熱意とかの話しされても……


そんな声が聞こえてきそうです。でも、言わせてください。

そもそも「これを書きたいんだ」という強い気持ちがないと、読み手の心にグッとくる物語はできません。

それがない話は忘れ去られていきます。

脚本初心者の方は今の情熱を忘れないでください。

何本か脚本を書いたことがある人は、まずは初心にかえってみましょう。思考錯誤して苦しみながらも書きたい話を書きたいように書いていたあの時の気持ちを思い出してください。

当ブログでは脚本の作り方について、論理で書いていますが、正直言って物語は論理で書くものではありません。

僕自身も理詰めで書いた脚本をスクールの先生に見せたとき、「綺麗にまとまってはいるけど、突き抜けるものがない」と、自分の感情がのっていないことを見抜かれたことがあります。


最終的には「論理を知った上で、感情で書く」ことが大事だと今は思っています。

脚本家の野島伸司さんも「昔は左脳でシナリオを書いていたけど、今は右脳で書いている」と言っています。


つまり、「最初のうちは論理的に計算をして物語を組み立てていたけど、今は物語に感情をのせてそれを大切に書いている」ということです。

一流のプロがおそらく何年かかけて辿り着いた境地なので、この言葉の意味の本当のところが腑に落ちるには、莫大な時間と経験が必要だとは思います。

まずは感情で書けるようになるために、論理で書く方法を学ぶことが必要だと思います。

「論理ではなく、感情で書く」ということを目標にして、いつかは辿り着けると信じて進み続けることが大切です。



というわけで今回は以上となります。

次回は「シナリオ骨法その八、ヤマ」について書いてきたいと思います。

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