今回はこういった疑問に答えるべく、「シナリオ骨法十箇条その十、オダイモクについて解説していきます。
本記事の内容
・シナリオ骨法十箇条・その十、オダイモク
・テーマはなぜ必要か
・テーマの簡単な作り方の手順
・テーマを作る上でいちばん大切なこと
脚本初心者のよくある疑問として、「そもそも物語にテーマって必要なの?」ということがあると思います。
結論、テーマは必要です。理由は後で書いていきます。
僕も元々は、「テーマなんていらない」「書き進めれば勝手にテーマは見えてくるだろう」と書き始め、結局なにが言いたいのか分からないシナリオを作り上げていました。
とはいえ、そんな僕ももう脚本の勉強を始めて5年ほど。スクールに通ったり、様々な本で勉強したり、映画を分析したりするうちに「テーマの重要性」が分かってきました。
そこで今回は「物語においてなぜテーマが必要なのか、テーマはどう作ればいいのか」ということについて解説していこうと思います。
本記事は、『仁義なき戦い』などの脚本を書かれた笠原和夫さん考案のシナリオ骨法十箇条を元に「骨法その十、オダイモク」について掘り下げていきます。
シナリオ骨法十箇条・その十、オダイモク
シナリオ骨法十箇条について書いてある『映画はやくざなり』にはオダイモクについてこう記してあります。
映画はやくざなり/笠原和夫
お題目。テーマである。お題目はハッキリ唱えなきゃ宗旨が分からない。
そして、オダイモクとは「志」=「切実なもの」とも書いてあります。
映画はやくざなり/笠原和夫
「切実なもの」が貫通していなければ、観ている側の腹は一杯にならない。
ふむふむ。まずはなんとなく分かれば大丈夫です。以下で僕の考えも交えて解説していきます。
テーマはなぜ必要か

まず、なぜテーマは必要なのか。理由は2つあります。
- ①なにが言いたいのか分からない話はつまらないから
- ②観客は物語になにかしらの意味を求めているから
①なにが言いたいのか分からない話はつまらないから
映画を観終わって「ん?結局なにが言いたいの?」と思ったことがみなさんにもあると思います。
極論、なにが言いたいのか分からない話はつまらないということです。
テーマがなかったりテーマがあやふやな物語は最後まで観た後、「で、結局なにが言いたいの?」と思われてしまいます。
そういう物語があってもいいですけど、できれば観客や読み手の胸になにかが残るようなストーリーを書きたいですよね。
誰かの胸に残るような、そんなストーリーを書くためにはテーマは必須の要素です。
②観客は物語になにかしらの意味を求めているから
映画を観るにしても小説を読むにしても、観客や読み手の人の時間をもらうことになります。
時間をかけて読み進めた物語に対して、読み手はなにかしらの意味を求めるものです。
せっかく時間を使ったのに物語から何も得られなかったとき、人は不満を抱きます。
結局なにがしたかったのか分からないような映画を見たとき、時間を返せと思いますよね。 テーマさえあればそれはまた違ってきます。
観客を満足させるためにもテーマは必須の要素であると言えます。
テーマの簡単な作り方の手順

手順は以下の通りです。
- ①名言・格言から引用する
- ②テーマと逆の考えを持った主人公を作る
- ③その主人公の考えが逆転するようなストーリーを作る
①名言・格言から引用する
まずはテーマを決めるとき、名言や格言から引用してみましょう。
なかなか初めのうちは、テーマを決めろといきなり言われても、よく分からないかと思います。
ですので最初のうちは、気に入った名言や格言からテーマを見つけるのがオススメです。
たとえば、『何を一番愛しているかは、失ったときに分かる』という格言があります。
これをそのまま物語で伝えたいこと(テーマ)にしてしまおう、ということです。
テーマとは、作者が物語を通してなにを伝えたいかということです。
「自分にはそんな大それた考えもないし、伝えたいことなんて特にないかも……」という人も名言や格言から引用しちゃえば問題なしです。
「名言から引用とかそんなことしていいの?」と思う人もいるかもしれませんが、テーマとは既存の価値観の再認識でしかありません。
お金より友情を大事にしろとか、仕事より家族を大事にしろとか、そんなのみんな知ってるよということでいいのです。
「家族を大事にするなんてあたりまえのことだけど、みなさん本当にできてますか?」という既存の価値観を伝えることも物語のひとつの意味だと僕は思います。
誰でもひとつくらい好きな名言や格言があると思います。漫画のキャラクターの名セリフでも、外国のことわざでもなんでもいいです。
テーマなんて思いつかないという人は、まずは名言や格言をヒントにして、テーマを見つけてみましょう。
②テーマと逆の考えを持った主人公を作る
では次に、そのテーマを物語にのせて伝えるにはどうしたらいいでしょう。
そのためにはまず、テーマと逆の考えを持った主人公を作ります。
そうすることで、主人公の成長を通してテーマを伝えることができるのです。
どういうことか。例としてここではアインシュタインの名言を引用します。
一見して人生には何の意味もない。しかし一つの意味もないということはあり得ない。
アルベルト・アインシュタイン
『誰の人生にだって、必ず意味がある』ということです。これって特に真新しさはないですよね。でも全く問題ないです。
この名言と逆の考えを持った主人公、つまりここでは『俺の人生には何の意味もない』という暗〜い考えを持った主人公を作ればまずOKです。
③その主人公の考えが逆転するようなストーリーを作る
そんな暗〜い主人公が、物語の中で誰かと出会ったり、試練に立ち向かったりします。
そうするうちに『俺の人生にもなにか意味があるのかも』と主人公の考えが変わっていく過程を描くのです。
その過程を描いていくことで、主人公の成長を見せることができ、テーマを伝えることができます。
ここで注意してほしいことは、初めに設定した主人公の性格は変えてはいけないということです。キャラをブラすなということですね。
変化するのは主人公の“気持ち”であって、成長するのは主人公の“考え方”です。暗〜い性格から逆転して明るい性格になるということではありません。
ここを意識しておけば、主人公の成長を上手く描くことができ、自然にテーマを伝えることもできるでしょう。
テーマを作る上でいちばん大切なこと

結論は「作者自身が心から思っていること」を書くことです。
そうしないと書いていて楽しくないからです。物語を書くときくらい自分の気持ちに正直になりましょう。
書くのは「フィクション」ですが、伝えるのは作者の「リアルな思い」であるべきです。
物語やそのキャラクターたちの言葉にのせて、普段は言えないような自分の思いや考えを書けるというのは、作家の醍醐味だと僕は思っています。
初心者のうちは名言や格言からヒントをもらってもいいですが、慣れてきたらぜひ自分の考えをテーマにしてみてください。
実生活で自分が得た学びをテーマにするのもいいでしょう。
テーマとは作者のあなた自身が心から思っていることを伝えるものです。
自分がいちばん大切にしているもの、ずっと後悔していること、生きる上で根底にある揺るがない信念、などじっくりと考えてみてください。
それが作家としての力となり、作品のオリジナリティに繋がるのだと思っています。
では骨法その十オダイモクについてはこれで以上です。
骨法その一〜その九までは、すでに解説済みですので、まだ読んでない方や復習したい方は下記リンクからどうぞ。
骨法その一、コロガリ>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その一、コロガリ】
骨法その二、カセ>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その二、カセ】
骨法その三、オタカラ>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その三、オタカラ】
骨法その四、カタキ>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その四、カタキ】
骨法その五、サンボウ>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その五、サンボウ】
骨法その六、ヤブレ>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その六、ヤブレ】
骨法その七、オリン>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その七、オリン】
骨法その八、ヤマ>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その八、ヤマ】
骨法その九、オチ>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その九、オチ】
シナリオ骨法について、くわしいことはすべてこのブログに書いてありますので、執筆のときのヒントに活用してみてください。
というわけでシナリオ骨法十箇条シリーズはこれにて終了です。少しでも参考になれば嬉しいです。

ではまた次回。骨法とともにあらんことを ……
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