スジがきちんとできてない映画に、観客はビタ一文も払ってくれない
『映画はやくざなり』 笠原和夫
シナリオ骨法十箇条とは、『仁義なき戦い』などの脚本家である笠原和夫さんの『映画はやくざなり』という本に書かれた脚本術です。
笠原さん曰く、これは自分が考えたものじゃなくて、昔から脚本家たちの間で言われてたことをまとめただけのものだ、とのことです。
とてもためになる脚本術なので、脚本家になるなら常識として知っておくことをオススメします。
【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方

今回は骨法その一、「コロガリ」について解説していきます!
骨法その一。「コロガリ」

転がり、である。英語でいえばサスペンス。
これから何が始まるかと客の胸をワクワクさせ、引っ張り出された糸がもつれたりほぐれたり絡んだりして、最後は初めの糸にキチッと収斂されて大空高く凧が舞い上がる、という展開の妙をいう。
『映画はやくざなり』

う~ん、なんだか難しそうだぞ……

難しく考えなくて大丈夫。ポイントを3つ解説していきます!
「コロガリ」を理解して活用するためのポイントは3つです。
①何が起こるのかということを端的に示すべし
②観客の感情を最優先に考えるべし
③「コロガリ」は「きっかけ」だと理解すべし
順に解説していきます。
①何が起こるのかということを端的に示すべし
物語では必ず、話を転がすための事件が起こります。
「事件が起きた。さあ、どうする!?」というのがコロガリです。
物語において、まずこのコロガリが面白いかどうかがいちばん大事です。
コロガリが無かったり、コロガリが弱かったり、コロガリが悪い物語は、単純につまらないです。
*面白いコロガリの例
『ロッキー』・・・「ヘビー級チャンピオンから次の対戦相手に指名された!」
『ジョーズ』・・・「町のビーチに人食いザメが現れて退治することに!」
面白い「コロガリ」になっているかかどうかを確かめるには、人に話して反応を見るのがいいです。
これやってない人けっこういる気がしますが、ちゃんと自分のアイデアを人に話してください。
そうすることで、ひとりよがりのつまらない話を書き始めなくて済みますよ。
今持っているアイデアを人に話せないということは、そのアイデアを自分でも本当のところ気に入っていないということなのです。
まず前提としてその話は面白いのか、必ず書き始める前に人に話して、自分のアイデアを客観的に見るようにしましょう。
②観客の感情を最優先に考えるべし
「コロガリ」が悪い話というのがあります。
コロガリが悪いというのは、事件が起きたのに「主人公はこのあとどうするんだ?!」という気持ちがまったく起こらないということです。
それはなぜか。理由は1つです。
コロガリが悪いのは、その物語の主人公が視聴者や読者にとって「どうでもいいヤツ」だからです。
つまり、主人公に感情移入できない話だと、どれだけ面白そうな事件が起きようが「コロガリ」はまったく機能しないのです。
では、どうすれば主人公に感情移入してもらえるのか?
簡単なコツがあります。
それは主人公を困らせるという方法です。
『ロッキー』・・・「ヘビー級チャンピオンのから次の対戦相手に指名された!」
どんな主人公?・・・「やさぐれた落ち目のボクサー。自堕落な日々をどうにかしたいと思っているが、諦めかけているヤツ」
『ジョーズ』・・・「町のビーチに人食いザメが現れて退治することに!」
どんな主人公?・・・「子供の頃に溺れた経験がトラウマ。水が大の苦手でわりとヘタレな赴任したての警察署長」
起こった事件に立ち向かうために、いちばん葛藤する主人公を設定することで、コロガリが悪くなることを防ぐことができます。
この主人公は、問題に立ち向かうことができるのか?勝利できるのか?という気持ちを視聴者や読者が感じられるように物語を設定してみましょう。
③「コロガリ」は「きっかけ」だと理解すべし
「コロガリ」はSAVE THE CATの法則で言うところの「きっかけ」のパートです。
ハリウッドの脚本術と、日本で言われてきた脚本術も似ているところが多々あります。
「コロガリ」=「きっかけ」と考えてもらうと分かりやすいかと思います。
「きっかけ」についてはこちら>>>>SAVE THE CATの法則まとめ!面白い脚本の書き方③(きっかけ・悩みのとき編)
まとめ

基本的に脚本家たちは「コロガリ」があるものを「ストーリー」と呼んでいます。
この意味が腑に落ちるまで少し時間はかかりますが、いっぱい映画を観て、自分で話を作っていくうちにだんだんと分かってきます。
物語を書きたいならまずはコロガリを考えてみてください。
キャラクターから考える人や、ラストシーンから考える人もいるかと思いますが、初心者向けではない気がします。天才ならそれでもいいですけど。
まず最初のうちは、良いコロガリのアイデアが見つかったら、そこからキャラクターを設定し、ラストを決めて……という感じで話を形作っていくのがいいでしょう。
慣れてくると、コロガリとキャラクターが同時に作れるようになっていきます。
基本の型を知らない人に型破りなものは作れません。
しっかり型を学んだ上で、破っていきましょう。
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