シナリオ骨法十箇条とは、『仁義なき戦い』などの脚本家である笠原和夫さんの『映画はやくざなり』という本に書かれた脚本術です。
とてもためになる脚本術なので、脚本家になるならできれば常識として知っておくことをオススメします。
骨法その一はこちらから>>>>【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方【その一、コロガリ】
【秘伝・シナリオ骨法十箇条】知らないと損する面白い脚本の書き方

☑本記事の内容
・8種類のカセの具体例
・カセの効果的な使い方
物語の創作法は大きく2種類あります。
ひとつはストーリー主導型、もうひとつはキャラクター主導型です。
シナリオ骨法はストーリー主導型の物語の作り方です。
ストーリー主導型の物語は、映画や単発ドラマなどの短めの物語の創作向きです。
逆に、連続ドラマや連載漫画など比較的長めの物語はキャラクター主導型で作ると面白くなりやすいです。
キャラクターについてはまた別の機会に記事にしてみたいと思っています。

今回は骨法その二、「カセ」について詳しく解説していきます!
骨法その二。「カセ」
主人公に背負わされた運命、宿命、といったものである。「コロガリ」が主人公のアクティブな面を強調するものであるのに比べて、「カセ」はマイナスに作用するファクターとなる。
映画はやくざなり
カセとは「主人公の行動を制限しているもの」です。
なぜカセが必要なのでしょうか?
簡単に言うと、カセがあると葛藤が生まれ、物語が面白くなるからです。
・カセがあることで→葛藤が生まれる
・葛藤が生まれると→物語が面白くなる
カセを乗り越えることがドラマになっていきます。
乗り越えるべきものがないと、読者や視聴者は物語に入り込めません。
まずは難しいことは考えず、とりあえずカセを設定してみましょう。
そうすると自ずとけっこう面白い話ができてしまいます。

でもどうやってカセを設定すればいいんだろう?

話のカセには、そんなにたくさんの種類はありません。僕なりに8つに分類してみました!
8種類のカセの具体例

先日、「8種類のカセ」をまとめた下記のツイートをしました。
☑︎物語のカセの種類
①時間(爆発まで30分、余命1ヶ月)
②秘密(過去の罪、出自)
③隔絶(監獄、雪山)
④約束(遺言、自分の信念)
⑤身体(病気、障がい)
⑥立場(教師と生徒、里親と養子)
⑦禁忌(不倫、殺人)
⑧災害(地震、台風)— ヒセオ (@HiseoLife) 2019年3月6日
シナリオセンターに入ったときに「カセ表」というプリントをもらったのですが、それを元に僕が自分なりに使いやすいカセをまとめたものです。
カセの種類を暗記する必要はないですが、脚本家として知っておかなければならない部分ではあります。
これらのカセを使いこなせるようになれば、面白い話を作れるようになります。
では、8種類のカセを下記にまとめてみたので、スクショでも撮っていつでも見られるようにしてもらうといいかもです。
①時間のカセ
時間のカセ。限られた時間の中で行動しなければならないキャラクターを描きます。
・爆発まで30分
・余命1ヶ月
・締め切りまで3日
・電車の時間まで5分
など
②秘密のカセ
秘密のカセ。誰にも言えない秘密を抱えたキャラクターを描きます。
その秘密のせいで、行動が制限されます。
・過去の罪
・部落出身
・黒歴史
・美容整形
など
③隔絶のカセ
隔絶のカセ。隔絶された空間に置かれることで、行動が制限されるキャラクターを描きます。
・戦場
・雪山のロッジ
・無人島
・病室(入院)
など
④約束のカセ
約束のカセ。交わした約束に縛られ、行動が制限されるキャラクターを描きます。
・父の遺言
・自分の信念
・婚約
・見栄を張ってついた嘘
など
⑤身体のカセ
身体のカセ。うまく動かない身体のせいで行動が制限されるキャラクターを描きます。
・病気
・怪我
・身体障がい
・極度の疲労
など
⑥立場のカセ
立場のカセ。その立場のせいで行動が制限されるキャラクターを描きます。
・教師と生徒
・里親と養子
・病人と健常者
・刑事と犯人
など
⑦禁忌のカセ
禁忌のカセ。罪を犯したことで行動が制限されるキャラクターを描きます。これは「秘密のカセ」の現在形です。とても強い葛藤を作ることができます。
・不倫
・殺人
・借金
・偏った性癖
など
⑧災害のカセ
災害のカセ。災害に巻き込まれたことで行動が制限されるキャラクターを描きます。
・台風
・地震
・飛行機事故
・火事
など
カセの効果的な使い方

カセを設定するときの注意点は主に2つです。
①ひとつの話にカセは1つとは限らない、複数設定すべし
②乗り越えるのが不可能に思えるようなカセを設定すべし
まず、①ひとつの話にカセは1つとは限らない、複数設定すべしについて。
ひとつの物語にひとつのカセということは基本的にありません。(短い物語は例外です)
例えば『世界の中心で、愛を叫ぶ』では「時間」「隔絶」「身体」「立場」など複数のカセをうまく組み合わせて使っています。
カセがひとつだけだと、どこかで見たことがあるようなありがちな話になってしまいます。
詰め込み過ぎも良くないですが、複数のカセを組み合わせることで、その話や葛藤するキャラクターにオリジナリティが出てきます。
次に②乗り越えるのが不可能に思えるようなカセを設定すべしについて。
自分で物語を作るとき、カセを手加減して設定しまうことは結構ありがちです。
「ちょっと頑張れば乗り越えられちゃうんじゃない?」というカセは、カセとして機能しません。
乗り越えられない壁が高ければ高いほど、ドラマは盛り上がります。
脚本を書き進めていると「何かつまらない」「なぜか面白くならない」ということがあるかと思います。
つまらない話を手っ取り早く面白くする方法は「カセを設定して物語にぶち込む」ことです。
自分の書いた話がつまらないと感じた時は、その物語にカセはしっかり設定されているか確認してみてください。
結論:面白く新しい物語を作りたければ、乗り越えるのが不可能に思えるカセをいくつか設定して、それによって葛藤するキャラクターを描くべし。
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